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労働契約法第14条「出向」について







出向とは、出向元企業との雇用契約は維持されたまま、労働者が別の企業へ異動する事です。

企業は社員に出向命令する状況になった場合、労働契約法第14条を正しく理解していないと命令自体が無効となってしまう場合があります。

今回は労働契約法第14条「出向」について解説します。


目次



1.労働契約第14条「出向」とは?

企業が対象社員に出向命令を出すことができる状況でも、その命令が「権利の濫用」と判断されてしまうと出向の命令効力が無くなってしまうことです。

権利の濫用と判断される判断基準は、出向を命令する必要性の有無・社員の選定が適切であるか等、事情が考慮されることを規定したものです。


2.出向とは?

出向とは、「在籍型」と「移籍型」の2種類があります。


2-1.在籍型出向

一般的の出向という意味は、出向元企業との雇用契約を維持したまま、労働者が別の企業へ異動する「在籍型」になります。以下は「在籍型」出向の特徴です。


●出向元との雇用契約は維持した状態のまま出向先と雇用契約締結と出向先へ異動(二重契約)

●出向元と出向先が出向契約を締結

●必要に応じていつでも出向元の企業に戻れる

●給与・社会保険料等の支払いは出向先・出向元双方の話し合いで決定

●出向契約の中で期間が明確に定められていることが一般的


2-2.移動型出向

「移動型」の出向は、出向元と出向先の間で転籍契約が結ばれ、出向社員は出向元との雇用契約を終了し、出向先とのみ雇用契約を結びます。

つまり、出向先の労働者として働くことがメインとなる契約です。

以下は「移動型」出向の特徴です。


〇出向元との雇用契約を終了して出向先とのみ雇用契約を締結

〇出向元と出向先が転籍契約を締結

〇給与・社会保険等の支払いは出向先となる

〇出向先で一定期間働いても必ずしも元の職場へ復帰できるとは限らない


移動型出向は、事実上の転職となるケースが多い為、労働者の負担が大きくなる契約です。

必ず労働者との同意が必要になり、企業側が一方的な命令することはできません。

労働条件が具体的に提示されていても、労働者は拒否することも可能となります。


3.出向命令の必要条件とは?

企業が業務命令として労働者に出向命令を出すためにはいくつかの条件が必要となります。

ここでは、


●権利の濫用をしていないこと

●就業規則に出向規定が設けられていること


2つの条件を解説します。


3-1.権利の濫用をしていないこと

【権利の濫用】は労働基準法第14条の通り出向において禁止されている重要事項になります。また、労働契約法第3条の第5条で「権利濫用の禁止の原則」としても定められています。

権利濫用の判断基準は、上記の労働契約第14条「出向」とは?でも記載しましたが、


●出向を命令する必要性の有無

●社員の選定が適切であるか

●出向先の労働条件に不利益がないか

●出向者の生活状況を考慮したか


など考慮した上で判断されます。

具体的な例で挙げると、子供が生まれたばかりで育児面、金銭面でも厳しい状況の社員に出向を明示したが、引っ越しが発生する事や、単身赴任によって寮費などの実費が多くなってしまうことなどから、出向者に著しく不利益となり、出向が必ずしもその社員でなくても問題がない場合、権利の濫用に当てはまる為、命令が無効となる場合があります。


3-2.就業規則に出向規定が設けられていること

就業規則や労働協約に出向に関する規定が設けられていることです。

出向に関する事項が社内の規則として定められていて、出向先の労働条件によって出向社員に損が生じない場合に関しては、命令は認められています。


また、出向の必要性について、社内規定によって定めていること、また目的も明らかにしておくことがが必要にあります。

以下は出向の必要性についての社内規定の例になります。


●経営戦略の指導や教育のため(人材戦略)

●他の企業との関係性構築のため(企業同士の交流)

●会社の経営状況によって出向が必要となった場合(雇用調整)

●実務経験やキャリア形成のため(人材育成)


4.まとめ

出向については、「権利の濫用」が発生した場合には出向できなくなります。

事前に就業規則に記載しておくことや、出向者との面談や出向者の事情把握などをしておくことが大切です。

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