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労働契約法第5条「労働者の安全配慮義務」について







労働者の安全配慮義務とは、企業が労働者の安全に対して行う安全に関する配慮です。

働き方改革などによって、安全配慮義務に関する注目が高くなってきている中で、ストレスチェックの義務化などの具体的な法律上の整備も進んでいます。

今回は安全配慮義務について解説します。


目次



1.労働者の安全配慮義務とは?

労働者の安全配慮義務とは、「企業は労働者に対して安全・健康に関する配慮を行うこと」が義務化となりました。

雇用している労働者の人数に関係なく、1人でも労働者を雇用すれば発生する義務として、労働契約法に定められています。


少し前までは、労働災害が発生した場合に企業の安全配慮義務の違反の有無が問題になっていましたが、現在では”パワハラ””セクハラ”などが、安全配慮義務の違反の有無が問題になることが多くなっています。


企業は、労働者が安全・健康に働けるように【物理的な職場環境の整備】【事故防止策の実施】【心身の体調に対する対策の実施】などを行う義務があります。


安全配慮義務を怠り、かつ労働に関するトラブルや事故が発生してしまった場合、企業は多額の損害賠償請求を受ける可能性があるので、必ず遵守するようにしましょう。


2.安全配慮義務の範囲とは?

安全配慮義務には、”健康配慮義務”と”職場環境義務”が定められています。

企業は、労働者が安全に働けるようどのような処置が必要なのかを考え、対策を実施する必要があります。


2-1.健康配慮義務

労働者の健康面を企業側が管理するという考え方です。「健康」については心と身体の両面のことであり、メンタルでの健康についても重要視されています。


健康配慮義務の管理・対策については以下の3つになります。


●健康診断

●労働時間管理

●メンタルヘルス対策


2-1-1.健康診断

各事業者は1年に1回、労働者に健康診断を受けさせる義務があります。また深夜業務や有害業務に携わる労働者には、健康診断を半年に1回健康診断を受けさせるという、一般の労働者よりさらに厳しい健康配慮義務が設けられています。


2-1-2.労働時間管理

安全配慮義務違反になる残業労働時間(過労死ライン)は、【2~6ヵ月のいずれかの平均労働時間が80時間、又は1ヵ月100時間】となっています。


この基準時間を超える労働をさせた結果、過労死・過労が原因で自殺が起こった場合は、配慮義務違反となります。


2-1-3.メンタルヘルス対策

2015年、労働者の心理的負担を把握するために、企業に対してストレスチェックの実施が義務化されました。


企業は、労働者の心身と健康を守ることが会社の義務となっています。そのため「仕事上のストレス軽減」「労働者の生活の質の向上」といったワーク・ライフ・バランスの実施に対して、適切な取り組みを行う必要があります。


2-2.職場環境配慮義務

企業は、労働者に対して「働きやすい良好な職場環境を維持する義務」を負っています。

職場内のいじめや、嫌がらせ・ハラスメントなどを原因としたうつ病や自殺などが多発した事によって、いじめ防止対策本部を企業義務化したものです。企業はハラスメント対策をはじめ、職場環境の整備をすることや、労働者の心と身体の健康に配慮しなければなりません。


2-2-1.ハラスメント対策

2020年~新型コロナウイルスの流行によって、テレワークが活発化となったことなど、職場で

労働者同士が顔を合わせて仕事をする機会が減少傾向にあります。その事からリモートハラスメント(リモハラ)・テクノロジーハラスメント(テクハラ)など、新たなハラスメントが発生する可能性が高くなってしまい、従来のハラスメント対策がうまく機能しないといった問題も発生しています。


ハラスメント対策は、労働者がいつでも気軽に相談できる環境が必要です。

テレワークでも”ハラスメント”に対して対策を行い、【ハラスメントを許さない】という姿勢を示すことも重要です。


2-2-2.ハラスメントの種類

ハラスメントは様々な種類がありますが、いくつかの種類をご紹介します。


●パワーハラスメント(パワハラ)

 職務上の地位や人間関係など、職場内における上下関係や優位性を利用し、業務の適正な範囲を

 超え、本人の意に反することを強要する行為・言動

●セクシャルハラスメント(セクハラ)

 性的な嫌がらせ。身体的な接触によるもの、言葉によるものがある。男性が行為者で女性が被害者

 であるケースに限らず、逆の場合や同性に対するケースもある

●アルコールハラスメント(アルハラ)

 酒席などでの酔った状態における迷惑行為、本人の意に反した飲酒の強要、意図的な酔いつぶし

 など、飲酒(アルコール)に関わる迷惑な発言や行動

●エイジ・ハラスメント (エイハラ)

 年齢による差別や偏見、嫌がらせなどの行為・言動。特に、女性に対して行われるケースが多く

 見られる

●ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)

 女性、男性という理由のみで、性格や能力の評価を決め付けるなど、性に関する固定観念や差別意識

 に基づいた嫌がらせ行為

●リストラハラスメント(リスハラ)

 リストラ目的の社内的ないじめ。リストラの候補者に対して嫌がらせを行うなどして、自主退職に

 追い詰めようとする行為


その他にも多くのハラスメントの種類がありますが、ハラスメントについては”ハラスメントとは”

の記事にて詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。


3.安全配慮に違反した場合とは?

企業は安全配慮義務違反と判断された場合、その責任を負われる可能性があります。


3-1.民法415条 【債務不履行】

債務不履行とは、契約によって約束した義務を果たさないことです。

安全配慮義務違反に該当した場合、企業は債務不履行による損害賠償を請求される可能性があります。


3-2.民法709条 【不法行為責任】

不法行為責任とは、故意・過失によって、他人の権利や法律上保護される利益を違法に侵害した場合、被害者に対して損害を賠償する責任を負うことです。


3-3.民法715条 【使用者責任】

使用者責任とは、労働者が他人に障害を発生させた場合に、その労働者が損害賠償の責任を負うだけでなく、会社その労働者と連携して被害者に対して損害賠償の責任を負うことです。

※ただし、企業(使用者)が労働者の選任及びその監督について相当の注意をした場合、または相当

 注意をしても損害が発生した場合は、この限りではない


4.安全配慮義務の実施すべき対策とは?

安全配慮義務を実施すべき対策では以下の6項目です。

その中の【労働環境の整備】【安全衛生教育・管理の実施】2項目について紹介します。


●労働環境の整備

●安全衛生教育・管理の実施

●安全装置の設置

●社員の健康管理

●産業医との連携

●相談窓口の設置


4-1.労働環境の整備

労働環境の整備の具体的な内容は以下になります。


●労働者のストレスチェック

●メンタルに関する社内相談窓口の設置・カウンセラーの配備

●パワハラ・セクハラなどのハラスメント対策

●メンタルヘルス研修の実施

●健康状態や個人的な悩みについての個別面談の実施


以上のほかにも、労働環境の整備を行うことで、ストレス低減や健康状態の改善が見込まれます。それにより労働者の能力・生産性の向上など、企業業績の上向きとなる効果が期待できます。

また、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止)の施行によって

大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年6月1日からハラスメント相談窓口の設置が義務化されました。企業には、安全衛生に関して労働者の声を拾う窓口の整備が求められています。


4-2.安全衛生教育・管理の実施

安全衛生管理の具体的な内容は以下の通りです。


●安全衛生委員会を設置(従業員50人以上の事業所では必須事項)

●機械の操作手順に関する研修の実施

●新人や配置転換をした労働者に対する安全衛生研修の実施

●定期的な機会メンテナンス・点検

●産業医の配置

●健康診断の実施


万が一ケガやトラブルが発生しても、すぐに対応できるよう環境と体制を整えておくことが重要です。

新規採用者や配置転換後の労働者は、企業が実施している安全配慮に関する対策を知らない場合があります。入社時や配置転換前に実務の手順や危険防止策・事故が発生した際の対処法など、安全衛生教育を速やかに実施しなければいけません。


また、産業医の配置では、ストレスチェックの結果からの産業医からアドバイスをもらったり、ストレスが高い人・長時間労働者との面談結果を記載した意見書を作成してもらうなどして企業を支えています。


5.まとめ

安全配慮義務では、労働者に対して安全・健康に関する配慮を行うことが義務され、健康配慮義務と職場環境義務が定められています。

健康配慮義務では、労働者の「健康」、つまり心と身体の両面を管理する配慮の事です。

職場環境配慮義務では、労働者に対してハラスメント対策や、職場環境の整備等を行い心と身体の健康に配慮する事です。


安全配慮義務を違反してしまうと、【債務不履行】【不法行為責任】【使用者責任】に負われる可能性があります。


罰則を受けない為にも、安全配慮義務の実施すべき6つの対策を行いましょう。


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