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裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備について







派遣労働者と派遣元、または派遣先との間にトラブルが発生した場合、早期解決のために、行政による裁判外紛争解決手続(行政ADR)が整備され、派遣労働者は裁判をまたなくても簡単な手続きで迅速に紛争を解決できるようになりました。

今回は裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備について解説します。


目次



1.裁判外紛争解決手続(行政ADR)とは?

裁判外紛争解決手続(行政ADR【Alternative Dispute Resolutionの略】)とは裁判以外の方法で紛争を解決する手続きのことです。当事者同士での話し合いと裁判の中間という位置になり専門知識を持った、利害的な関係がない第三者を中立な立場として置き、トラブル解決を図ります。


2.裁判外紛争解決手続(行政ADR)の種類とは?

ADR機関によって様々な紛争の解決方法が用意されていますが、一般的には「あっせん」「調停」「仲裁」の3つの解決方法となります。


2-1.あっせん(調整型)

「あっせん」は第3者としてあっせん人が間に入り、当事者双方の考え方を客観的にまとめる等、話し合いがスムーズに進むように手助けをします。基本的には当事者同士による自発的な解決を図りますが、あっせん人が解決案を掲示する場合もあります。


2-2.調停(調整型)

「調停」も当事者同士での解決を補助する手続です。しかし、第三者として間に入る調停人によって解決案(調停案)が作成・提示されます。

解決案に当事者が同意すれば解決となりますが、解決案に納得がいかなければ拒否することもできます。

「調停」と「あっせん」は似ていますが、「調停」では、第3者が解決案を積極的に”提示”しますが、「あっせん」では”基本的には当事者双方の考えを客観的にまとめる”という違いにあります。(ADR機関によっては「あっせん」でも解決案を提示するところもあります。)


2-3.仲裁(裁断型)

「仲裁」は、事前に当事者同士の合意(仲裁合意)によって解決を第3者である仲裁人に委ねて、仲裁人の判断に従うことで紛争を解決します。仲裁人による判断には、裁判の判決と同じように強制力があります。

一見「裁判」と似た仕組みですが、事前に合意を行うことと、仲裁合意した紛争については裁判を受けられなくなってしまう点は注意が必要です。裁判の「上訴」に相当する制度がないため、仲裁判断に不服を申し立てることはできません。



3.裁判紛争解決手続(行政ADR)の内容とは?

都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。

「均等待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」ついても、行政ADRの対象となります。



これまで、パートタイム労働者や派遣労働者に関しては、行政による助言・指導に関する規定はありましたが、改正後は有期雇用者も同様の規定の扱いとなりました。


また、行政ADRの根拠規定が整備されたことで、都道府県労働局において無料・非公開の裁判外紛争解決手続を行えるようになりました。「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても行政ADRの対象となったため、行政機関を活用して労働紛争の解決を図る選択肢が広がります。


4.労働問題における行政ADRの対象

行政ADRには、いくつかの対象によって内容が異なります。

労働問題における行政ADRは、主に裁判所・労働委員会(中央・都道府県)・都道府県労働局・紛争調整委員会の4つが紛争解決・救済の機関です。


4-1.裁判所

1人の労働審判官(裁判官)と2人の労働審判員(専門的な知識を有する専門員)による労働審判委員会が、原則として全3回以内の話し合いによる解決を行い、迅速・柔軟な解決を目指します。

裁判所での手続きになりますが、通常の裁判とは異なります。


4-2.中央労働委員会と都道府県労働委員会

中央労働委員会では、不当労働行為事件の審査等の、労働争議のあっせん・調停・仲裁が行われます。都道府県労働委員会では、これらに加えて個別労働紛争のあっせんについても対象となります。



4-3.都道府県労働局

主に個別労働紛争に関する手続き(未然防止・相談・助言・指導 等)が対象となります。

また、男女雇用機会均等法第16条に規定されている紛争の調停も行います。

こちらの場合は、専門家が介入するわけではなく、都道府県労働局長が主宰者となっています。



4-4.紛争調整委員会

個別労働紛争によるあっせんが対象となり、厚生労働省が任命した3~12人の委員(労働問題の専門家)が公正な視点であっせん案を提示するものです。男女雇用機会均等法第16条に規定する紛争の調停については、紛争調整委員会長が指名した3名の調停委員によって行われます。


5.裁判外紛争解決手続(行政ADR)のメリット・デメリットとは?
5-1.メリット

裁判外紛争解決手続(行政ADR)は裁判と比較して手続が簡単・迅速であるため、本来であれば長い時間をかけ、費用高くなってしまいますが、それらを抑えてトラブルの解決を図ることができます。

また、裁判は内容が公開されますがADRは非公開のため、関係者以外にトラブルの内容や調整結果などの情報を知られることはありません。


5-2.デメリット

裁判外紛争解決手続(行政ADR)での解決には、あくまでお互いの合意が必要です。

「あっせん」・「調停」の場合には解決案に強制力がないため、当事者の片方が解決に向けて消極的であれば、解決することができません。結果的に裁判へ移行することとなった場合、時間と費用が余計にかかってしまいます。

また間に入る第3者について、公的な認証を受けた機関であったとしても、裁判官と比較すると公正さや中立性は劣る可能性があります。

裁判かADRかの選択は、解決にかかる時間や費用だけで判断せず、トラブルの内容を踏まえて判断することが重要といえます。



6.今後企業が取り組むべきこととは?

法改正によって、今後企業が取り組むべき内容は主に以下の6項目になります。


●法改正の対象労働者の有無確認

●雇用形態の待遇の違い

●違いが生じる理由の確認

●不合理ではない説明がしっかりと提示・明示されている

●まだ法対応が出来ていない状態であれば、早急に対応する

●労働者の意見等を踏まえて計画的に改善に努める


まずは、在籍者の雇用形態を把握し、法改正の内容の対象になるか否かを確認しましょう。

その次に、パートタイマー労働者・有期雇用労働者など雇用形態による待遇差・内容を全体的な把握が必要になります。


待遇差が生じた場合、その理由を確認して、「待遇事」に考え方を整理します。理由については「不合理ではない」と説明できるように文章としてまとめておきましょう。


法対応が出来ていない、可能性があると想定される内容については、早急に改善するように努め、その際の改善計画を立て、労働者の意見も聞きながら迅速に改善できるよう取り組みましょう。


7.まとめ

同一労働同一賃金などの法改正に対して、「待遇差」について等派遣労働者とトラブルになってしまう可能性があるかもしれません。そのような場合は、行政ADRを活用して紛争解決を図るという選択もできます。

当事者同士の直接的な話し合いでは熱くなってしまい、中々話しが進まない可能性がある中で、行政ADRでのトラブル解決では、第3者が間に入る為、冷静かつ円満に解決に期待ができそうです。

裁判以外にもこのような手段があることを覚えておきましょう。


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